劇薬「ことば」のワタシ的取扱いルール

親しい人からもらう愛のあるアドバイス。
私のためにと、投げかけてくれた「ことばたち」。

でも
何度その「ことば」が呪縛になって私の道を塞いできただろう。

お母さん。

母は、私のことが大好きだ。彼女の頭の中は「自分と同じ過ち」または「彼女の人生観の中で良くないであろうこと」を私にさせないように、あらゆる障害を除去していくことでいっぱいだった。

「お母さんは、結婚に失敗したの…。」

「あなたは結婚に向かないタイプよ」

「だから、男の人に頼らずキャリアウーマンになってね」

こんな「ことばたち」を幼いころから何度となく聞かされてきた。そうか、結婚ってよくわからないけど、お母さんが言う通り良くないことなんだろう。小さな私にとって、母のことばは絶対だった。

それから大人になりどんなに男性と交際をしようとも、結婚するというイメージを持てないまま今日まで来てしまった。

 

他人のことばで「自分らしさ」を築いていたという気づき

長い間、母親からのジャッジメントが間違っているはずがないと思い、毎日を積み重ねてきた。だが、30歳の時にひょんなことから台湾に住むことにした私。これまで私をすっぽりくるんでいた「あるべき姿」と、全く離れたフィードバックを受けるようになった。

このとき、母だけではない色んな人に言われてきた「私論」について、初めて疑問を持つようになったのだ。

  • あれ?海外生活に向かいないタイプとか言われていたけど、なんとか生活できてるぞ。
  • あれ?茶髪が似合わないと言われていたけど、台湾にいる人はみんなよく似合っているといってくれるぞ。
  • あれ?自分の意見をはっきり言っても、うっとおしがられないぞ。

色んな人からの善意で塗り固められた「岸本洋子」らしさという層が、ポロポロ毎日少しずつ落ちていく。

 

アドバイスをするのって難しい、何を言えばいいのだろう

日本で長年培った自分の価値観は、海の向こうで生活をはじめたことで、あっさりとふにゃふにゃと輪郭を失った。毎日少しずつ、私も回りにいる人も気づかないくらいスピードで、ゆっくりゆっくり。

台湾で生活を始めて2年半たった今、改めて誰かにアドバイスをすることって難しいな、と考えるようになった。自分は良かれと思って投げかけた「ことば」が誰かを縛ってしまっているのではないかと怖くなったからだ。

 

でも、

「ことば」がどうしても必要な時がある。目の前にいる人が私の「ことば」を待っていることもある。でも誰の生活も人生も縛りたくない、かといって無責任で心にもないことを言いたくはない。「ことば」の副作用を再認識したあと、にこにこ笑って決定的な発言を避けるようになった。

でも、このままじゃだめだろう。
どうしよう…どうしよう…。ぐるぐると堂々巡り。

もう一度最初から考えてみよう。
振り出しに戻る、だ。

つまり、私を縛っていたことば以外で、私に新しい世界を見せてくれた「ことばたち」ってなんだっけ。

  • あの文章はとても面白かったよ
  • いつも前向きで、色んな人を巻き込むパワーがあるね
  • ありがとう、頼りにしているよ
  • 笑っている顔がかわいいね

 

あぁ、褒めてもらうこと。

何気ない、こんなささいな「ことばたち」は確実に、私を新しい場所に連れて行ってくれた。ひとつひとつ、照れくさいけれど丁寧に丁寧に思い出していく。

ありがとう。ことばたち。

 

劇薬「ことば」は使い方次第で、毒にも薬にも

人のことばで自分をかちこち硬め、海の向こうで剥がされ、迷った末にたどり着いた場所。
今心がけている、私のことばの取り扱い方。

□ 好きなことは隠さず、照れず、直接伝える
今日のリップの色がキレイね。さっきの冗談が面白かったね。すぐに忘れずに言う。

□ なるべくポジティブなことばを渡す
いつでも長所を探す視点を持ちたい

□ ネガティブなことばを伝える必要があるときは、その裏返しのことばと一緒に
例えば「三日坊主」は「チャレンジ精神があるね」と一緒に渡す

□ 一緒に熱狂する
自分が好きなことに出会ったときは、本能にことばをまかせてみる

私の口から、握るペンから、PCから飛び出して届く「ことばたち」。
誰かを癒したいなんて大きなことを望んでいるわけではない。

ただ、誰かの心を縛ることなく。一緒に寄り添えるような「ことば」を、大事な人に伝えていければと冬の寒い夜に、思った。

 

* * *

P.S. 受け取るとき

この文章はお正月に浴びた両親のことばにむずむずして…
もしかすると、私と同じような思いをしている人がいるんではないかな、と思ってこの文章を書いた。

ヨーコ | 台湾で編集長 on Twitter

お正月、帰省中の全ての若い人に伝えたい 両親のアドバイスは聞かないで。 私は実家に帰るたびに、親世代にのみ有効なアドバイスを浴びる。 真心からの言葉だから厄介だ。 でもこの「今」新しい時代に彼らのアドバイスは有効ではない。自分でしっかり考えて決めよう。そっと笑顔で聞き流そう。

今、大きな流れが変わろうとしている中で「今まで」の常識が少しずつ効かなくなっている。でも大事な人がかけてくれたことばだから…と「ことばの呪縛」に苦しんでいる人も多いのではないか。流れに身を任せて、自分で決めて、時には笑って聞き流すことも聞き手として求められる時代なのかもしれない。

岸本 洋子 @yoko_taiwan

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